代表への一極集中から組織化への挑戦:NPO法人サンカクシャの半年間の軌跡〜ボードフェロープログラム参加団体ケース紹介vol.2
本記事では、ボードフェロープログラム第3期(2023年)に参加したNPO法人サンカクシャの参加動機や参加を通じた変化をお届けします。
ボードフェロープログラムとは?
ボードフェロープログラムとは、ビジネスリーダーと非営利組織の経営陣が、社会課題解決事業の経営について本質的な議論・協働を通じて、社会にインパクトをもたらすリーダーシップを磨く、約6か月間の実践・体験型プログラムです。
これまで、非営利組織のボードメンバー・経営陣と、企業の経営者、大手企業サステナビリティ/CSR部長、次期役員候補、新規事業企画者、弁護士、会計士、議員、大学教授、非営利団体の代表、大学院生といった多様なセクターの人々が共に経営やガバナンスについて学び、セクターを越えて協働・創発を生み出す土壌を育んできました。
NPO法人サンカクシャとは?
特定非営利活動法人サンカクシャは、親や身近な大人を頼ることができない15〜25歳くらいまでの若者が孤立せず、自立に向かえるよう、若者の社会サンカクを応援する団体です。2008年、現在はサンカクシャ代表理事を務める荒井佑介さんがホームレス支援活動に参加したことがルーツとなり、2019年にNPO法人として設立されました。
10代〜20代の若者支援を見た時に、小中学生を対象とした行政支援に比べ、高校中退者など15歳以上の若者に対するサポートがまだまだ少ないという現状があります。
このような背景から設立されたサンカクシャは「居場所」「住まい」「仕事」の3つの観点からなる事業を通じて、若者が社会との繋がりを得て、安定した生活を送り、自分らしく生きていくことができるようサポートに取り組んでいます。
出典:サンカクシャHP
出典:サンカクシャfacebookページ投稿
BFP参加者名と参加当時の役職
・荒井佑介さん(代表理事)
・塚本いづみさん(事務局次長)
・早川智大さん(居場所事業マネージャー)
・宮本緑(社会サンカク事業マネージャー)
Q1)参加動機
第3期ボードフェロープログラム(以下、BFP)に参加を決めた当時のサンカクシャ、単年度の助成金に偏った経営状況からの脱却、組織全体の中長期戦略の策定・共有に着手するという、団体としての次のステージをめざす変革期にありました。
それ以前のサンカクシャは、大きな方向性として経営基盤とファンドレイジング体制の強化、そしてこれらを支える中長期計画の策定などのテーマが懸念事項となっていました。
しかし、経営に関しては経営課題を扱う場が仕組みや制度として整っておらず、代表に責任と裁量、仕事が集中している状態でした。また、経営課題の共有は不定期に雑談ベースでその場にいるスタッフに対して行われることが多く、サンカクシャの経営について考えている人の絶対数が少ない状態でした。
事業運営については、各事業ごとにプロジェクトリーダーが生まれるなど軌道に乗りつつある一方、事業間の情報共有や組織の全体像を把握できていない状態でもありました。
加えて、人数も増えてきていましたが、人事労務の制度づくりがまだまだ未整備な点があったり、今後、新しく入ってくるスタッフをいかに採用するか、どのような成長の機会を提供できるかといったキャリアステップの形成も課題として挙がっていました。
今後の事業拡大を見据えた時に、スタッフの間でサンカクシャとしての中長期のビジョンが共有されていることや、それに基づいて代表頼りにならず自主的に動く体制への移行も考えるべきタイミングになっていました。
このようなことを考えているタイミングで、World in YouのBFPに出会ったように思います。
Q2)BFPを通じての変化、気づき、学んだことなど
模擬ボードミーティングの第2回目に、1人の参加者の方から代表の荒井に対して率直なフィードバックがあったのですが、このことは参加した4人にとって印象的な出来事でした。
サンカクシャが運営しているシェアハウスがあるのですが、そこに代表の荒井と、あるスタッフも一緒に住むという話がありました。しかし、その参加者の方から「代表自身が仕事とプライベートを分けることが大事」「シェアハウスでの同居は、スタッフへの仕事の意識への影響も大きい」といった旨のフィードバックをいただいたのです。
それ以前は代表の荒井に近いスタッフほど、寝ている時間以外はすべて仕事のような感覚が強かったですが、この出来事をきっかけに荒井の公私の区別やワークライフバランスについての意識が変わり、持続可能で健康的な働き方への意識も生まれて来たように思います。
NPOという社会に対して良い活動を行おうという取り組みの中で、どうしても肯定的な意見も多くなりがちな中、耳の痛い意見でも率直に寄せていただけたこともありがたく感じました。
この時の経験がきっかけとなり、サンカクシャとしてのその後のBFPへの参加のスタンスが方向付けられました。
また、BFPの参加を通して、事業運営の中心メンバーが事前準備のために継続的に集まる機会が生まれ、他分野の方々と継続的に話し合う中で一人ひとりの視座も高まったように思います。
BFP参加以前から「発生した課題に対して即、行動に移す」という文化はあったように思いますが、毎月開催される模擬ボードミーティングでいただいたフィードバックを基に具体的なアクション策定などに反映していくことで、組織の変化が加速しました。
組織としてはBFP参加中に事業マネージャーが役割として明確化され、早川、宮本もそれぞれの事業のマネージャーに就任しました。
マネージャーが明確になると「この件は荒井さんなしで話そう」など、マネージャー一人ひとりの組織に対する責任やオーナーシップが高まったように思います。
創業期は経営課題を扱わなくとも、勢いやエネルギーで突き進める部分があるかもしれません。サンカクシャは設立から5年ほど活動して来ましたが、次のフェーズに向かうタイミングでこのプログラムに出会えてよかったですね。
BFPは終了しましたが、今回のような外部のアドバイザーを招いて経営課題について話す機会をサンカクシャでも独自に作っていければと考えていたり、外部理事を打診したいという方も見つかりつつあるので、今後も皆さんと継続的にコミュニケーションしていきたいと考えています。
出典:サンカクシャfecebookページ投稿
BFP第1期〜第3期を経て、これから
以上、ボードフェロープログラム第1期(2021年)に参加したNPO法人サンカクシャの参加動機や参加を通じた変化を紹介してきました。
そして、2023年の第3期のプログラム終了後、2024年4月にWorld in Youは第1〜3期の参加者が集うギャザリングを開催しました。
【開催報告】ボードフェロープログラム・ギャザリング2024 (note)
このギャザリングは、私たちにとって第1期〜第3期のこれまでを振り返る機会であり、第1期〜第3期の参加団体、参加者の皆さんにとっては各期を超えて出会い、繋がり、新たな協働の種となる場になったのではないかと考えています。
そして現在、World in Youは第4期ボードフェロープログラムの参加団体を募集しています。詳細はこちらからご覧ください。
本記事をきっかけに「ボードフェロープログラムについてもっと知りたい!」と思っていただけましたら、ぜひこちらからメッセージいただくか、今後の情報発信のチェックをよろしくお願いいたします。