異なる視点を受け止める大切さ:第二創業期を迎えた認定NPO法人マドレボニータの葛藤と奮闘〜ボードフェロープログラム参加団体ケース紹介vol.1
本記事では、ボードフェロープログラム第1期(2021年)に参加した認定NPO法人マドレボニータの参加動機や参加を通じた変化をお届けします。
ボードフェロープログラムとは?
ボードフェロープログラムとは、ビジネスリーダーと非営利組織の経営陣が、社会課題解決事業の経営について本質的な議論・協働を通じて、社会にインパクトをもたらすリーダーシップを磨く、約6か月間の実践・体験型プログラムです。
これまで、非営利組織のボードメンバー・経営陣と、企業の経営者、大手企業サステナビリティ/CSR部長、次期役員候補、新規事業企画者、弁護士、会計士、議員、大学教授、非営利団体の代表、大学院生といった多様なセクターの人々が共に経営やガバナンスについて学び、セクターを越えて協働・創発を生み出す土壌を育んできました。
認定NPO法人マドレボニータとは?
認定NPO法人マドレボニータは、1998年に創業者・吉岡マコさんが開始した産後女性のヘルスケア推進活動を母体とする非営利団体です。2008年に東京都の認証を受けて特定非営利活動法人の法人格を取得後、2017年に認定を受けて以降は現在に至るまで、更新を重ねながら認定NPO法人として活動を継続されてきました。
法人名であるマドレボニータ(Madre Bonita)はスペイン語で「美しい母」を意味し、子育ての導入期という最も不安定な時期にある女性の心と体の健康のサポートを通じて、母となった女性が、本来持っている力を発揮できる日本社会をめざして活動に取り組まれています。
出典:PR Times
出典:マドレボニータXの投稿
BFP参加者名と参加当時の役職
・中桐昌子さん(共同代表理事)
・山本裕子さん(共同代表理事)
・永野間かおりさん(理事)
Q1)参加動機
第1期ボードフェロープログラムへの参加当時、マドレボニータでは経営体制の大きな変更が行われたばかりでした。
2020年に、前理事長であり創業者である吉岡マコと、それまで経営を担っていた理事も全員退任(1名は理事と兼務していた事務局長として続投)となりました。さらに、中桐昌子、山本裕子の2名が理事長を務める共同代表制への移行と理事メンバーの刷新という、団体にとっての第二創業期にありました。
創業者は数年前から代表交代を視野に入れており、新しい組織体制への移行を模索していましたが、当初の予定よりも前倒しでの体制移行でした。
そして、新理事長となった中桐、山本含め、新しく就任した理事6人うちの半数は10年以上のインストラクターとしての現場経験があるものの、これまで団体経営については経験がない状態でした。そのため、新しい体制を持続可能にしていくための経営視点を身につける必要がありました。
自団体のメンバーだけでは視野が狭くなってしまいますし、広く社会を見渡してみて、その中で私たちの団体の役割やあり方を見つめたい、と考えていました。
こういった背景もあり、様々な団体や企業からの視点や考えを学び、私たちが目指す「すべての家族に産後ケア」をさらに広い視野で考え、つながりを作っていきたいと考えてプログラムの参加を希望しました。
Q2)BFPを通じての変化、気づき、学んだことなど
プログラムに参加した当初、私たちは企業の皆さんと議論するということで気負っていたり、私たちの活動を知ってもらう機会でもあるということで気張っていたところがあったように思います。
「そもそも、マドレボニータの皆さんが連携すべきは企業なんでしょうか?行政じゃないですか?」といった質問をいただいた時も、面食らったような感覚もありました。
ある模擬ボードミーティングの際には「誰が責任を取るのですか?」「広報に関して〇〇の数字はどのようになっていますか?」などの質問をいただき、これまでの社会に対する思いやパッション、感情で活動してきたところだけでは成り立たない、責任や数字に関する意識について考える機会となりました。
資金調達などの面も含め、旧経営陣の皆さんにお任せしていたところをまだまだ自分たちは理解できていなかったのかもしれないという気づきがあり、また、合同セッションの中で社会にはさまざまな事例があることも学びました。
そういった中で模擬ボードミーティングの際も「とにかくありのままの自分たちを出していこう」と徐々に意識が変わり、「私たちは何を大切にしていきたいか?、どのようなガバナンスを選んでいきたいか?」と考え始める中で、肩の力が入りすぎず、事前準備も力まずに臨めるようになったように思います。
参加されている皆さんからは的確な質問やフィードバックをいただくことができ、回を重ねる中で、鋭い意見の方も愛があっての発言なのだと感じられる関係性もできてきました。
そのようなプロセスを経て、BFPを終えた後も引き続き、私たちの活動に伴走いただきたい!と何名かの参加者の方々にご協力をお願いしたところ、新たに団体の監事や外部アドバイザーとして参画いただけることになり、現在も定期的に相談しご意見をいただく場を持っています。そんな素晴らしい出会いをいただいたことにも改めて感謝しています。
BFPの場は、「立場や前提の違う方に対してどのように伝えるか?」や「質問に対してどのように向き合うか?」について練習する「道場」のような場でもあったように思います。
プログラム参加の後半で、皆さんからの問いかけやフィードバックをきっかけに団体のサービスの見直しも起こりました。産後ケアバトン制度というマドレボニータとして10年以上続けてきた制度だったのですが、「こうすることで喜ばれるだろう」とどこか頭が固くなっていた前提を問い直し、制度対象者である多胎児の母たちに実際にヒアリング調査するなど、対象や条件などを見直すチームが立ち上がったこともその一例です。
内部のスタッフとしても「それが大事」ということはわかっていたけど、でも手がつけられない。そんな状態だったものもありましたが、外部から見て「こういう声が上がったよ」ということを持ち帰ることによって「あ、やっぱり大事なんだね」と共有できて、それが行動に表れるような形で背中を押してもらえました。
また、参加していた3人は毎月の経営ミーティングや外部の方を招いたアドバイザリーボードなどの機会とは別に、BFPの準備のために集まる機会が増え、それぞれの強みや苦手、互いの特徴や価値観などについてもじっくり話し合うことができました。
この経験から、3人の強みを活かした役割分担がより明確になったり、互いの価値観の違いを認識・尊重した上で進め方を考えたりと、それまで以上の信頼関係が生まれてきたように思います。
出典:産後ケアのNPO法人マドレボニータXの投稿
BFP第1期〜第3期を経て、これから
以上、ボードフェロープログラム第1期(2021年)に参加した認定NPO法人マドレボニータの参加動機や参加を通じた変化を紹介してきました。
そして、2023年の第3期のプログラム終了後、2024年4月にWorld in Youは第1〜3期の参加者が集うギャザリングを開催しました。
【開催報告】ボードフェロープログラム・ギャザリング2024 (note)
このギャザリングは、私たちにとって第1期〜第3期のこれまでを振り返る機会であり、第1期〜第3期の参加団体、参加者の皆さんにとっては各期を超えて出会い、繋がり、新たな協働の種となる場になったのではないかと考えています。
そして現在、World in Youは第4期ボードフェロープログラムの参加団体を募集しています。詳細はこちらからご覧ください。
本記事をきっかけに「ボードフェロープログラムについてもっと知りたい!」と思っていただけましたら、ぜひこちらからメッセージいただくか、今後の情報発信のチェックをよろしくお願いいたします。