*この記事は、WIT(現World in You)のホームページからの再掲載です(2018年4月17日)

 

ボード&ガバナンスについて学んでゆくインタビュー第3弾は、BLP-Network代表であり、WITを含め多くの団体の理事・監事を務める、瀧口徹弁護士です。理事・監事としての関わり方や、良い関係性のための秘訣など伺いました!

~これまでの経緯~
WITでは2016年から、ボード&ガバナンスワークショップを始めており、社会企業/NPOの代表・ボードメンバー・スタッフ・ボランティアの方や、社会貢献に興味があったり関わっているビジネスパーソンの方に、受けていただいております。その中で、日本の事例をもっと学び蓄積していきたいね、という声が多数上がり、この記事のシリーズを始めることにしました。

普段知る機会が少ない、NPOの理事・監事としての関わり方について、ぜひ覗いてみてください☆

聴き手:吉岡利代、大谷紗知子
文責:山本未生

 

若いうちから団体の方向性を決めるような重要な意思決定に携わる機会は、大企業法務や企業勤務では得難い経験

1. 瀧口さんの現在の非営利組織への関わりを教えてください。

瀧口:
役員として関わっているのが、NPO法人3keys(副代表理事)、NPO法人Accountability for Change(監事)、NPO法人コニアス(監事)、公益社団法人ハタチ基金(監事)、一般財団法人日本病児保育協会(監事)、一般社団法人WIT(理事)、BLP-Network(代表)です。
理事・監事としては無償で関わっており、そのほかに、顧問弁護士として有償(非営利向け価格)で契約を結んでいる非営利組織が複数あります。

2. 多くの団体に関わっていらっしゃいますね! これらの活動にどのくらいの時間を使っていますか?

瀧口:
私の業務時間に占める割合としては、理事・監事としての業務が10%くらい、顧問弁護士としての仕事も入れると大体半分くらいだと思います。理事・監事でも関与の度合いには濃淡があり、監事として年数回の関わりの団体もあれば、頻繁に理事会を開催し関わっている団体もあります。副代表理事を務めている3keys、理事会の開催頻度の高いハタチ基金などは、関わっている時間が多いですね。3. アメリカでは、ビジネスパーソンが非営利団体のボードやアドバイザーを務めることはかなり普及しています。日本において、営利企業と非営利団体のボード人材をさらに繋げることは可能でしょうか?どうしたら双方向の学びを深められるでしょうか?

3. これらの団体にはどのように関わり始めたのですか?

瀧口:
団体の立ち上げ時から関わっていてそのまま役員になったことが多いです。3keysはフローレンス代表理事の駒崎さんから代表の森山さんを紹介いただき、定款づくり・NPOの設立認証申請の段階から関与しました。森山さんの話を聴きながらやりたいことを実現できるように整理していきました。

瀧口さん(中央)、吉岡さん(左)、大谷さん(右)(インタビューにて)

4. 理事・監事としては、どのような関わりをしていますか?

瀧口:
基本は、「団体の活動や手続きが法的に正しいか?問題ないか?」と尋ねられることが多いです。またロジカルに考えることが得意なので、代表者や事務局の話を聴いて問題点や論点の整理をしています。WITでも、理事会の前に代表理事と個別の打合せを持ち、話を聞いて問題点をまとめる等の交通整理をしています。

5. 本業へのメリットはありますか?

瀧口:
営利企業への法的サポートを本業としているのですが、そういった営利企業への提案などに役立っていると思います。例えば、企業に対して「プランAではこのようなメリットやリスクがあります、プランBではこのようなメリットやリスクがあります」といった形で、法的リスクやメリットを検討・提示する機会が多いのですが、最終的にどちらのプランを採用するかは、一定の規模の営利企業の場合は取締役会などで決められ、自分は最終意思決定には関わりません。これに対して、非営利団体の場合は、どちらを採るべきかの最終的な意思決定に近い立場でのアドバイスを求められるケースが多くあります。

若いうちから団体の方向性を決めるような重要な意思決定に携わる機会は、大企業法務や企業勤務では得難い経験だと思います。こういった経験を生かして、営利企業に提案する際にも最終的な意思決定を見据えた提案ができるようになったと感じています。

 

理事と団体経営者とのコミュニケーションの大切さ

6. すばらしいですね!このような関わりができる人を増やすにはどうしたらいいでしょうか?

瀧口:
現在、ビジネス法務を専門とする弁護士が非営利団体に関わることをサポートするBLP-Networkの代表をやっています。現在弁護士側のメンバーは50人くらいおり、非営利団体の理事・監事をやりたい人も多くいると感じています。また非営利団体側からの相談案件も順調に増えています。

BLP-Networkの立ち上げ初期のメンバーは、自ら非営利団体とつながり積極的に活動していました。ただ、新しく入ったメンバーで、これまで非営利団体に関わった経験のない方は、自分が本当にできるのか躊躇する場合もあります。忙しさ等の時期的な問題もありますし、今後活動を広げていくにあたっては、弁護士と非営利団体のマッチングが課題だと感じています。

BLP-Networkまた、BLP-Networkでは他の企業等と連携して、非営利団体向けに法律相談会を実施しており、そこではベテラン弁護士と若手の弁護士が所属事務所の枠を超えてペアを組み、一緒に相談に乗っています。この相談からプロボノ等の長期的な関係性に発展することもあります。また、法律相談と合わせて非営利団体のボードが抱えている課題も知ることができます。

7. マッチングに関して、非営利団体側ができることはありますか?

瀧口:
マッチングの相手(弁護士)に何をしてほしいか、どのくらいコミットしてほしいか、という求めることを事前に明確にし、それを相手にもインタビュー時に伝えた上で、非営利団体と弁護士の期待値を揃えることだと思います。一旦、理事等の役職に就くと、短期間で他者に変わってもらうのは難しくなってしまいます。役職に就く前にプロボノとして関わり、関係性を深めてからボードに入るという流れの人が多いですね。

理事の場合は、非営利団体が理事に求めるものとして、大学の先生にネームバリューを求めたり、ビジネスパーソンに本業の知識や人脈を求めたり等、いくつかのバリエーションがあると思います。理事候補者本人に直接話すかは別ですが、団体内部では各理事に求める役割が明確になっていると良いですね。また意思決定の際には、全てを理事会で決めるのではなく、事前に代表理事と各理事が個別に相談して大きな方向性を決めることが多いですよね。その際に誰とどういうコミュニケーションをとって決めるのかがわかっていると良いと思います。

また、団体の成長と共に理事メンバーを交代することは当然だという空気があると良いと思います。団体のステージが変われば理事も変わって当然だと思いますので。
さらに、法務面で関わることについては、ボードで挙がったポイントを、団体内部の総務や法務の実務につなげられる人がいるかも重要です。

8. 瀧口さんは多くの団体の活動を続けていらっしゃるところがすごいと思いますが、秘訣などはありますか?

瀧口:
続いているところは、代表者とのコミュニケーションがうまくいっているのだと思います。団体側から積極的に依頼や情報が来るようになるといいのですが、そうでない場合は2か月に1度くらいこちらから団体の事務所に出向いて状況を聞いて、関われるところを相談するケースもあります。また団体の飲み会やイベント等には積極的に顔を出すようにしています。

 

~あとがき~

瀧口さん、こんなにも多くの団体の理事・監事(ボード)に関わっていらっしゃることに、改めて驚き、感謝・感銘の気持ちを受けたインタビューでした!
弁護士のボードメンバーというと法務面のアドバイスを思い浮かべてしまいますが、実は、論点の整理だったり、多様な意見・視点を客観的に並べ、長所短所を検討するというシーンにおいて、弁護士の方の持っておられる経験・姿勢・スキルは、団体経営において大変価値があるだと感じています。
「団体の成長と共に理事メンバーを交代」「(理事と)代表者とのコミュニケーション」「関係性を深めてからボードに入る」など、WITのワークショップでも扱っている点が多く、なるほどなるほど!と相槌を打ちながら、記事にしていました。
吉岡さん、大谷さん、インタビューしてくださり、ありがとうございました!

ー 山本未生

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World in Youについて: World in Youは、組織・セクター・国などの様々な境界を越えて、より良い社会を目指して共創するリーダーや組織、コミュニティを育てることをミッションに、これまで200以上の社会的ミッション企業や500名以上のビジネスリーダー、非営利組織のリーダーや学生たちにリーダーシップ育成プログラムを提供してきました。
訳書『非営利組織のガバナンス』(2020年、英治出版)