World in Youでは、より良い社会づくりに取り組んでいる様々な団体の想いや活動内容について伺いながら、皆さんにもお届けしようと、対談シリーズ「World in You × Org」を始めました。
その最初の試みとして2022年6月より月1回ほどのペースで、「女性の働くを豊かにする」分野で取り組んでいる団体との対談イベントを開催しています。本記事はその対談の要約です。対談の全内容はYouTubeでお楽しみください。

第4弾は、女性議員向けの勉強会や議員と地域のママの声をつなぐ活動などを進める、一般社団法人WOMAN SHIFTの本目さよさん(同団体代表理事/台東区議会議員)とたぞえ麻友さん(同団体理事/目黒区議会議員)にお話を伺いました。
(聴き手:三代祐子、山本未生、議事録:小沼瑠美、記事:鬼頭美帆)

(録画には講演後のQ&Aは含みません。)

 

政界における多様性の欠如に対する問題意識から、超党派の女性議員ネットワークを創る

(WOMAN SHIFTプレゼン資料より抜粋)

(本目)(以下、Q&Aの前まで同様)
「届きづらい女性の声を政治につなぎ、一つずつ実現していく」をミッションに、2015年8月に団体を設立し、今年一般社団法人化しました。それまでになかった、超党派の議員のネットワークを形成しており、議員を応援したいという市民とのつながりや活動の創出にも取り組んでいます。

女性の活躍は、政治の世界ではまだまだ比率が低く、特に地方議会は20-30代の女性議員比率は1%にも達していません。そうした中で、届きづらい女性の声を政治に届けて1つずつ実現していくための仕組みや制度づくりを、女性議員に限らずほかの方にも協力頂きながら、実践しています。

問題意識としては、仕組みをつくる政治の世界の多様性の欠如が大きいと思っています。(年齢では)若手議員が少ない、40歳以下は全体の10%未満であり、50代以上が70%という状況です。若手だけでなく女性も少なく、40歳未満の女性議員はたった1%です。女性全体でも、東京都23区でも30%ほどで、日本全体だと12%未満と少なく、女性議員がゼロの町村議会もあります。

 

2期目の壁

ウーマンシフトを立ち上げたきっかけのひとつに、1期目を務めても2期目に立候補をしないという「2期目の壁」というものがあります。2期目に選挙に出るかどうか、私自身もすごく悩みました。29歳で議員になり、4年間頑張ったものの、台東区議会議員32人のうちの1人として、どれだけ力が発揮できているのか、自分のキャリア的にこれでいいのか、と悩みました。しかし、2期目に入って政策を実現できるようになりました。一方で、同期が「(2期目は)出るのをやめる」のをみて悔しく思いました。ウーマンシフトの調べでは、ある統一地方選において、若手女性議員の3割以上が2期目に入らずに辞めていたという結果が出ました。
若手×女性議員を増やす必要性、当選後のサポートの必要性を感じ、ウーマンシフトを立ち上げました。同期の女性議員と話す中で、「悩んでいるのは私だけじゃなかったんだ」と救われたことから、ケアサポートや気持ちを共有できる場づくりをしたいと考えました。

 

女性議員が少ない3つの理由と、その支援

(WOMAN SHIFTプレゼン資料より抜粋)

女性議員が少ないことには、三つの課題があります。一つ目は、たいていの女性は、議員になることを考えたことがないということです。かつ議員をした後のセカンドキャリアがイメージしにくいこと。二つ目は、議員のなり方を知らない、実際の仕事内容を知らない、選挙の話を聞く機会が少ない、公職選挙法の詳細が分からない、選挙にかかる費用などの情報もわからないなどです。三つ目は、議員になってもやめてしまう方が多いことです。議員の世界には独特のルールがあり、男性社会であり、ロールモデルがいない、広い意味での政治経験が少ないなどの理由からです。
私は特に20代で議員になり、企業経験は5年ほどしか積んでいなかったため、広い意味での政治経験が少なく、ネゴシエーションの仕方など、政策を通すためのやり取りや調整が始めはできませんでした。高く掲げた理想と実際の落としどころのギャップに苦しむつらさもあります。

 

なんでも安心して話せることを大事に

ウーマンシフトの活動においては、安心して悩みごとやここだけしか話せない話をできるように配慮しています。また、理想だけではうまくいかない政治の世界において、現実に落としこむためにどうするかという「政策実現」を目ざし、党派を超えて誰もが同じ立場でスキルと技の共有ができること、価値観の押しつけなく、自分で考えて自分で決めるための材料、選択肢が得られる場づくりを大切にしています。現在、議員向けに会員制度を導入しており、30名ほどの会員がいます。会員は、女性あるいは55歳以下の男性で、イベント、交流会、セミナーなどへの参加、ハンドブックなど限定コンテンツの利用、LINEのオープンチャットコミュニティに参加できます。

 

WOMAN SHIFTの事業

女性議員ブランディング

女性議員をかっこいいと思ってもらえる機会をつくろうと、「女性議員増やそうプロジェクト」を日本政策学校さんと実施したり、女性議員の夫(パートナー)のインタビュー記事を掲載しています。大学でも、地方議員・女性議員としてのキャリアに関する講演を実施していますので、関心がある方はぜひお問い合わせください。

セカンドキャリア支援

議員を務めた後のキャリア形成の難しさに対する取り組みとして、「パブリックで輝く人」というタイトルで、議員のセカンドキャリアについてインタビューをしています。元小金井市議会議員の方へのインタビューでは、議員時代の何が今の仕事に生かされているか、どういうことを身に着けておくと次の仕事に生きるか、などに注目しています。今後は、議員を辞めても活躍できるように、副業などを通じてビジネススキルを高める研修なども行いたいと考えています。最終的に目指すのは、企業やNPOと議員との垣根がなくなり、跳び箱をひょいと飛び越えるように越えてまた戻ってこれるような社会です。

WOMEN SHIFTシスターズ

議員志望の若手女性向けに、選挙に関する勉強会、当選するための講座を、番外編を合わせて全7回やってきました。前回は2名受講し、2名当選しました。現職議員が講座を担当しているため(選挙活動中の)現時点では募集していませんが、本来であれば早い時期から志望者をサポートしたいと思っています。議員養成については他にも様々な塾があるので、私たちでなければできないことにフォーカスしていきたいと思います。

ジョセラジ

女性と政治を近づけるラジオです。女性議員のなり方、やり方がわからないという疑問に対して、議員の素顔や志望動機をインタビューし、スタンドFMというアプリで配信しています。統一地方選挙に向けて定期的に更新をしたり、女性議員100人インタビューなどもしてみたいです。

若手女性議員向け勉強会

メインの事業として、女性の声を政治に届けるための勉強会を3種類―「政策勉強会」、知恵やスキルを共有する「Chie会」、そして気持ちを共感しあう「おはなし会」ー開催しています。最近ですと、リプロダクティブヘルスに関する勉強会、流産・死産に関する勉強会など、今まで着目されてこなかったトピックで、届きづらい女性の声に着目できるような勉強会を心がけています。フェムテックなど新しいものに対しても関心が高い会員が多く、会員以外でも男性でも参加ができる勉強会なので、こんなテーマで、自治体レベルで女性の声を届けたい、話せる、という方がいたらぜひ教えてください。

「Chie会」は、「政策実現できる女性議員を増やし、地方議員を女性のキャリアの選択肢の一つとする」ことをミッションに開催しているワークショップです。例えば、ハラスメントへの対応、役所の職員との関わり方、他自治体の先進事例などを学ぶ視察に行くべきか、といった素朴な疑問や、仕事の中での失敗・成功事例、スキルや技を共有していくもので、今はオンラインで定期的に開催しています。

政治家ハラスメント白書

最近ニュースになることも増えましたが、政策実現や政党の中でうまくやっていくためには、ハラスメントがあっても訴えるのが難しいという課題があります。まずは政治家がどれくらいハラスメントにあっているのか可視化しようと、一般社団法人ポリライオンさんと共同で政治家ハラスメント白書を発行し、マニフェスト大賞という政策コンテストで、最優秀コミュニケーション賞を受賞しました。政党や地方議会などでのハラスメント防止策が国からも求められているため、その講師としても活動していきたいです。

ママの議員インターン

女性の声をもっと政治に届けるために始めた事業です。ママ(に限らず女性)が、地方議員のインターンとなり、8か月ほどの原則オンラインの活動で、自治体行政の仕組みや議員の仕事を学ぶ、イベントを企画して市民課題を解決する、自治体のサービスの調査・フィードバックなどをします。たとえば、保育園で見つけた課題や、ママ同士の愚痴などの声を議員に届けることもインターンとしての業務の一環です。これまで80名が体験をし、中にはこの経験も活かし統一地方選挙に出る方もいます。

議員にとっては、若い女性議員や子育て中の議員もいる中、昔ながらの後援会や宿泊を伴う宴会とは違った形で市民とつながり、市民と同じ感覚を持ち、自治体の課題に一緒に取り組む仲間もできる良さがあります。
ママインターンにとっては、育休や仕事のスキマ時間を使って、地域貢献や自身の学びの機会になったり、地域の愛着・関心が高まり、近所で志を共にする新しい仲間と繋がれるなどのメリットがあります。

 

団体としての課題 − 事業の継続性とマネタイズ

団体としては、いかに業務分散化するかが課題です。任意団体から一般社団法人化した後も、プロボノさんたちに支えてもらうものの、メインの業務は私とたぞえでやってしまいがちです。マネタイズも課題で、会費や勉強会の費用をいただいていても私たちは無報酬なので、事業の継続性という意味では、本当はスタッフにも報酬が払えるようになりたいと思っています。

 

プロボノに支えられて − ぜひ一緒に活動を

プロボノさんたちにすごく支えられています。現在は勉強会チームとママの議員インターン事業を担当するチームで活動しています。ママインターンの次の募集は5-6月ですので気になる方がいたら、ぜひ応募をお願いします。その他にも、インタビュー記事に執筆、プロジェクトマネジメント、マーケティングや広報戦略、要望書・提言書の作成、アドボカシーなどに関わってくださる方を募集しています。特にママの議員インターンについては47全都道府県に受け入れ議員がいるようなかたちにしていきたいと思っています。外国在住の方も一緒に活動をしています。女性の声を政治に届けるためにやってみたいことがある方はぜひご連絡ください。

 

Q&A

- ウーマンシフトとして、自分たちにしかできない、強みをもってやっていきたいところはどこですか?

(本目)
現職の女性議員がメインで動いているというのが私たちの一番の強みだと思います。議員を経験しているからこそわかることがあると思うので、それを活かし、他団体が既に取り組んでいることについてはお任せし、自分たちのやるべきことを削ぎ落とすことを考えてもいいと思っています。

 

- ミッションにある「政策をひとつずつ実現する」というところで、市民の声がどう政策につながるのか、実現とはどういうことなのか、事例で教えていただきたいです。

(本目)
例えば中等度難聴児の発達支援事業があります。耳が聞こえにくいお子さんは身体障がい者手帳の交付対象にはならないのですが、東京都では補聴器の購入費用が一部補助されていますが、他の自治体で補助対象に入っていないところがありました。そこで、そのようなお子さんがいる保護者の方がママ議員インターンとして、その声を議員に届け、実際補助金の対象になりました。

(たぞえ)
また、学校の給食費・教材費が負担だという声を受け、実際の金額だけではなく負担感ー感情の部分についての実態調査アンケートを目黒区・台東区で実施しました。実は義務教育で無償なのは授業料だけで、教科書が無償なのはそうした法律があるからで、それ以外は利用者負担なのです。給食費は額が決まっていても、教材費や学用品費があいまいで、実は負担感が大きいことなどがアンケートから分かり、管理状態を自治体側に確認しました。結果、目黒区では給食費と同様に教材費も監査を実施することとなり、学用品については学校ごとに差があるため、なるべく保護者の負担を考えて依頼するように指導することとなりました。これらも、お母さんたちとの雑談から生まれました。こういう活動を続けていきたいと思います。

 

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