World in You × Org」は、より良い社会づくりに取り組んでいる様々な団体の想いや活動内容について伺い、学ぶWorld in You の対談シリーズです。

第13回は、全国に広がってきたこども食堂を支援する、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえの経営企画部門の宮崎大輔さんと花岡洋行さんにお話を伺いました。

本記事は対談のまとめ記事です。対談の全内容はYouTubeでお楽しみください。
(聴き手:山本未生、記事:本多百音)

 

こども食堂とは?

むすびえは、こども食堂を「子どもが一人でも行ける無料または低額の食堂」と定義しています。最新の調査(第2回全国こども食堂実態調査)では、全国のこども食堂の約70%が年齢問わずあらゆる人を歓迎する広く開かれた場所であり、53%以上が高齢者も参加しています。

全国に9,100箇所以上があることが確認されており、年間延べ1,584万人が利用していると推計されています(2023年度)。むすびえとしては、全国の小学校区に一つある合計で2万箇所のこども食堂があることが望ましいとしていますが、まず全国の中学校の数である1万弱にかなり近づいてきました。

こども食堂の運営主体は多様で、半数近くが任意団体であり、個人や法人が運営している例も見られます。
参考:https://musubie.org/news/8560/

(むすびえプレゼン資料より抜粋)

 

こども食堂へのアンケートを行った「第2回全国こども食堂実態調査」の結果から、約80%のこども食堂が、こども食堂を開催する目的について、「子どもの居場所づくり」と「食事提供」を目的としています。

イメージは変わりつつありますが、こども食堂は生活困窮家庭支援の文脈で捉えられがちです。しかしながら、実際には多世代交流や居場所、地域づくりの目的で開催されている場合が多く、これが注目すべきポイントです。

このような事例を踏まえ、「子どもを中心とした多世代交流の地域の居場所」というメッセージが、むすびえの方針として採用されています。

参考:
第1回全国こども食堂実態調査結果(2022年3月発表) https://musubie.org/news/4881/
第2回全国こども食堂実態調査結果(2024年6月発表)https://musubie.org/news/9401/

 

こども食堂でのエピソード

こども食堂でのエピソードをいくつかご紹介します。

  • 家庭では偏食気味のお子様がこども食堂でお姉ちゃんお兄ちゃんが苦手なものを食べている様子を見て食べるようになった。
  • 不登校のお子様が、こども食堂に参加するうちに学校に通うことができるようになった。
  • 調理のボランティアで参加されてるお年寄りの方が、毎回参加する中で健康を意識して毎日30分散歩するようになった。

多くのこども食堂は、子どもや子育て世帯へのサポートはもちろん、さらに多世代が集うあたたかな居場所、地域づくりといった価値をもっています。むすびえは、ひとつひとつのこども食堂のあり方を尊重し、どの子どももアクセスできる状態となることを目指し、さまざまな方法で支援活動を続けています。

 

むすびえについて

2018年に設立されたむすびえは、こども食堂安心安全向上委員会が前身です。2012年に大田区で誕生したとされるこども食堂が、民間発の自発的・自主的な取り組みとして全国に広がる中で、安心安全を向上させるためのコミュニティが形成されました。

こども食堂は行政サービスとは異なり、年齢や属性、所得によってサービスを分けることなく、誰もが歓迎される場所であることが多いことが特徴です。こども食堂は地域の拠点としても機能し、行政サービスではカバーできないニーズに応える役割を果たしているところも多くあります。

むすびえは、こども食堂を運営する方々の取り組みをサポートし、その取り組みを通じて「誰も取りこぼさない社会」を実現することを目指しています。

 

(むすびえプレゼン資料より抜粋)
画像提供:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえHPより

 

具体的な活動として、以下の3つの事業を展開しています。

【地域ネットワーク支援事業】

各地域にこども食堂のネットワーク団体(中間支援団体)があり、我々が全国センターとしてネットワーク団体と連携しながら、立ち上げ支援、寄付物品の仲介、情報提供などご支援、応援していく活動です。

地域ネットワーク支援事業の一例:

  • 地域公開ワークショップ:こども食堂で起きている変化を全国に共有
  • 休眠預金活用事業:子ども食堂をハブとした地域の新しい循環づくり
  • 防災/IT学ぼう使おうPJ:ITを使った発信を学ぶセミナー開催や、地域拠点としての防災への取り組み。能登半島地震に関しても、石川県のネットワーク団体がこども食堂を支援したり、むすびえも募金活動をしています。

【企業・団体との協働事業】

こども食堂を応援したいと考えてくれる企業や団体と協働し、こども食堂の安心・安全を高める活動や、寄付・物品の支援仲介、子どもたちに体験を届けるプログラムの提供などを行っています。

企業・団体との協働事業の一例:

  • ファミリーマートとむすびえが協働で立ち上げた「ファミリーマート むすぶ、つながるこども食堂応援プロジェクト」:店頭募金をもとに、こども食堂を支援するプロジェクト。昨年度も1,000以上のこども食堂をご支援いただいた大きなプロジェクトです。
  • 物資支援仲介プロジェクト:様々な食品メーカーや地域の会社さんからの支援物資を各地域に届けています。
  • ライオンの「おくちからだプロジェクト」:こども食堂に集まった小学生を対象に歯磨きの仕方を教える事業。全国500ヶ所のこども食堂にライオンさんが出向き取り組んでいます。
  • アストラゼネカの「ヤングヘルスプログラム」:食育のための解説書を作成し、こども食堂に展開しています。

【調査・研究事業】

こども食堂に関する調査・研究を行い、結果を広く社会に発信しています。こども食堂の全国個所数調査や困りごとアンケート、こども食堂の場所をオープンデータ化することなどを通じて、こども食堂への理解を深め、社会に浸透させる取り組みを行っています。

むすびえは、これらの取り組みを通じて、こども食堂が社会に根付き、誰もがその恩恵を受けられるまちを実現することを目指しています。

(むすびえプレゼン資料より抜粋)
画像提供:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえHPより

 

Q&A

- こども食堂の場を使って食事以外のイベントをやったら迷惑でしょうか?こどもが集まる地域の拠点として興味を持っています。具体的には、こどもの理科教室とか多世代であることを生かしての職業教育、キャリア教育など。

多様なこども食堂が存在するので、運営者の方の方針によりますが、ぜひやっていただきたいという運営者さんもいると思います。

 

- こども食堂はPTAなどが直接関わるケースが多いのでしょうか?

個人が地域のネットワークを活用したり、学校と連携するなど、PTAのリソースを使っている例は色々ありますが、PTAが主催している例はあまり聞かないです。

 

- こども食堂が急速に広がってきたきっかけや理由、そして今後2万ヶ所を目指していくうえでの戦略は?

孤独孤立感、無縁社会を課題視している地域の方々が多かったと思います。コロナ禍で急速に増えた背景には、縁が分断され、何かしなくてはという気持ちが原点なのではと思います。
今後の戦略としては、まだこども食堂に関して動いてない業界もあるので、今の実例を共有しつつ、こども食堂へのご理解をいただけるようご説明を重ね、企業の地域の拠点があるところに広げていくことに、これから取り組んでいきたいです。

 

- こども食堂のようなことをしている団体に関係しています。むすびえさん、あるいは地域ネットワーク団体にお繋ぎできたらいいでしょうか?

先ほどご紹介したネットワーク団体、我々のカウンターパートのような方々がほとんどの県にいらっしゃいます。そういったところや、もしくはむすびえにご紹介いただければよいと思います。さらに、県レベルだけではなく、市区町村レベルでの活動についても、今後さらにつながっていきたいと思っているところです。

 

- 財源の獲得や組織基盤の強化はチャレンジだと思いますが、経営企画で活躍されてるお二人から中間支援的な団体の方へのアドバイスやメッセージをお願いします。

中間支援団体の方へのアドバイスというのはちょっとおこがましいし今すぐ出てこないですが、むすびえのスタンスを最後に共有します。
一般的なNPOは一つの団体でやりきろうとしますが、むすびえは全くそのスタンスをとらず、むしろ最終的にはむすびえはなくなり、むすびえがやってる機能を地域に譲渡していくというスタンスをとっています。今、さまざまな支援や共感を集めていますが、それをどうやって地域に循環させていくかを常に考えており、経営的にもそこにはかなり力を入れています。

 

- 一般市民としてどのようにこども食堂に関わると貢献できるか、ぜひアドバイスをください。

いろんな関わり方があると思います。利用者としてお子さまと行っていただいたり、運営者側の方に入っていただいたり。まずは一度行っていただき、そこで感じる想いを自由に表現いただければと思います。