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World in You Storiesでは、世界が少しでもよくなったらという想いで何かに取り組んでいる方、人生を生きている方を、世界のさまざまなところからインタビューするシリーズです。あなたの中の世界―world in you、と他の誰か・どこかの世界―world in someone、が出会うことで、お互いの世界がより豊かになる、そして、より良い社会につながっていく、そんな願いをこめてつくっています。

ストーリー第2弾は、World in Tohoku(WIT)時代からの協働支援先であり、共に学びあってきた一般社団法人りぷらす代表の橋本大吾さんに、チームメンバーの飯田が聴きました。今回を皮切りに、WITがご一緒してきた東北の社会起業家のストーリーを順次お届けしていきます。

 

話し手:橋本大吾

一般社団法人りぷらす代表理事。理学療法士。1980年生まれ、茨城県鹿嶋市出身。2013年東日本大震災最大被災地の石巻にて、一般社団法人りぷらす設立。2022年より長野県に移住し、遠隔でのマネジメントに挑戦中。人の可能性を信じ、パートナーシップを大切にし、暮らしに寄り添うことを仕事に。第1回日経ソーシャルビジネスコンテストファイナリスト。

 

聴き手:飯田晃介

保険会社にて営業職に従事した後、異業種のマーケティング業界へ転身。現在はリードナーチャリングから受注までを広くミッションとし、セールス領域の業務に関わる。2022年1月より World in Youに社会人プロボノとして参画。

 

本記事はインタビュー対談からの抜粋です。インタビュー全文はPodcastでお楽しみください。

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東北の現状を目の当たりにし、点と点が線で繋がった

 

―今、どんなことに取り組んでいますか?

 

東日本大震災で大きな被害を受けた石巻市で、「健康と介護」をテーマにリハビリや介護予防を中心とした取り組みを行う「りぷらす」を立ち上げ、2拠点で運営をしています。

震災後から約10年が経ったこの期間を一つのフェーズと捉えており、ここからは後進のマネージャーの育成や医療や福祉人材の育成をしていきたいと考えています。

というのも自分たちの住む地域を自分たちで良くしていって欲しい、そしてそのために必要な支援・サービス・プログラムを主体的に地域の方々で作って欲しいという思いが元々あったんですよね。その思いのもと、石巻から長野へ今年移住することに決めました。

 

なぜその取り組みを始められたのでしょうか?

 

東日本大震災の被災地支援がきっかけでした。

私は茨城県鹿嶋市出身なのですが、鹿嶋市でも小さな津波がきたり、地震で実家の瓦が壊れたりということが起こっていました。実家の支援をする中で家族の動揺や地域の人々の混乱を肌で感じ、東北の様相を慮りました。

そこで、東北に行って自分にできることをしたいと、石巻に向かったんです。

 

―現地はどのような状況だったんでしょうか?

 

実際に現地に行ってみて、医療や介護領域のニーズは非常に高いことがわかりました。

当時私が住んでいた埼玉県には専門的な医療や介護の支援が多くある一方で、東北にはこんなにも少ないのかと。一般的には理学療法士としての給与は社会保障から出ているにもかかわらず、地域毎の格差があることに愕然としました。このことは今まで全く意識していなかったことだったんです。

この事実を受けて、できることがあるのであれば現地で活動していこうと心に決めました。

 

そもそも理学療法士を目指されたのは、どのようなことがきっかけだったんでしょうか?

 

理学療法士になったのは27歳の時でした。それまではリハビリテーション科の助手として病院で働いていたんです。

病院では主に、尻もちなどで骨折してしまった高齢者に対してのリハビリ支援をしていました。毎年何十人もこのような人を受け入れている中で「病院でリハビリして歩いて帰れるようになるのも大事だが、そもそも転ばないようにするための取り組みが必要なのでは?」と思うようになりました。
そう思ってからは怪我や病気の予防につながるような理学療法士になりたいと思い、24歳で専門学校に入り直し、理学療法士になりました。

被災者支援をする中で、実際に医療保険や介護保険を使う前の段階(比較的軽微な症状)で困っている人が多くいることがわかり、りぷらすとして介護予防について取り組んできました。

 

「あるべき形に変える」のではなく「選択肢を増やす」

 

―震災後の約10年は橋本さんの人生にとってどのような期間でしたでしょうか?

 

5つのフェーズに分かれると考えています。

2011-2013年は非常事態期だったなと。東北で大変なことが起こり、自分に限らず色々な人ができることをしていたなと思います。2013-2014年は創業期。りぷらすを立ち上げました。2014-2016年は家族期です。この時期にパートナーと結婚し、子どもが生まれました。そして、2016-2018年を拡張期と名付けました。自分達の取り組みが少しずつ広がっていったなと実感できた時期でしたね。2019年から現在は変革期。移住することをメンバーに伝え、それに向け準備をしてきました。

 

―そのフェーズを経る中で思考の変化などもありましたか?

 

はい。転換点は、結婚して子どもが生まれたことでした。

それまでは自分たちが考える「あるべき姿」を介護・予防サービスの受益者に押し付けてしまっていたなと今振り返ると思います。

私たちの思いを受けて素直に「よくなりたい、元気になりたい」と思える受益者にとってはそれでもいいんですが、素直にそう思える人は実は多くないんです。よくなりたいと思えない時、人はどうしても他責の気持ちになってしまう。それは当事者・受益者双方にとって辛いことです。

介護サービスの中で僕らは支援者という立場ですが、あくまでも選ぶのは本人(受益者)であって。受益者の望む選択肢が、今の制度や支援の中でちゃんと可視化されているのかというと、現実にはされておらず、そこには情報の非対称性があります。

受益者側が選択肢の見えない形で決断を迫られているのは、すごく不公平だなと気づいたんです。選択肢が一つしかない状態での決断と、他にもある中での決断では、精神状態に大きな違いをもたらします。

その気づきから、選択肢を限りなく見えるようにしておくことための取り組みを始めるようになりました。

 

社会の最小単位である家族から、世界平和へ

 

―今後はどのようなフェーズになりそうでしょうか?

 

いまだ変革期なので、代表としてどのような役割が必要かを模索している段階ではありますが、家族の関係性についての取り組みをしていきたいと考えています。
現在、事業の一つとして仕事と介護の両立支援を行っていますが(介護離職や介護うつの予防)、そこで1つキーになるのが、家族の関係性だと思っています。

家族の関係性を遡っていくと、結婚するフェーズにたどり着きます。結婚からの価値観の移り変わりを「どのようにパートナーと共有していくか」が重要なポイントになると私は考えました。

核家族化や子育て家庭への負担増など様々な問題がある中で、私たちとしても何かしていけることがあるのではと。社会の最小単位は家族ですから、一つ一つの家族がより良い形をつくることが、課題を増やさないことになると考えています。

当然、家族単位での改善だけでなく、変わり続ける外部環境課題に対しての支援や政策も必要ですが、両輪で進めていければと思います。もともとが健康づくりに関係する仕事なので、家族の関係性づくりとうまく繋げて関わっていきたいなと考えています。

そしてそれが例え小さなことでも、積み重ねていくことで世界平和に繋がっていくはずです。

 

WITとの出会いで想いが形になった

 

―WIT(現World in You)とのこれまでの関わりについて特に印象的だったことを教えてください。

 

3つあります。1つ目は、アメリカの公衆衛生学会でのポスター発表です。

世界の高齢化の最先端である日本において、震災が要因でさらに急激に悪化した場所があるという事実と、そこでの取り組みを発信することが世界に役立つ可能性があると感じていた部分はありました。一方でそれを形にするイメージは持てていなかったんです。WITと協働することで、その想いが形になったことが印象的でした。

2つ目はラーニングジャーニーです。今までも、業界内の人と議論する場面はあったが、それ以外の多様なセクターの人と話をしたり、考える機会がほとんどなかったので、そこでの対話やディスカッションはすごく鮮明に記憶に残っています。

中でも、藤島さん(リクルートマネジメントソリューションズ株式会社 前代表取締役社長)との出会いは非常に重要なものとなりました。当時、新規事業の立ち上げやマネジメントの仕組みの構築に関して試行錯誤していたのですが、藤島さんの専門性や今までの知見などをお借りすることで「人と組織」を更に成長させることができたんです。りぷらす創業以前は企業経営をしたことはなかったので、藤島さんのご協力はとても大きな助けとなりました。今もなお、その時の教えをベースに活動していますし、当時理解しきれなかったことも、年数を重ねる中で腑に落ちることが多くなってきています。

3つ目はWITがつくってくださった場そのものです。学びになる部分がとても多く、現在りぷらすで行っているマネジャー研修などにも活きています。私たちもそのような場を作れるようになりたいと考えています。

 

多様なセクターの人と話すことで具体的にどのようなベネフィットがありましたか?

 

リーダーは孤独だと言われますが、自分と同じ境遇の人がいるんだと知れたことはとても励みになりました。もがき苦しみながら、一歩一歩の積み重ねをする中で、話しづらいことも話せるような人ができたのは大きかったですね。

また、チームメンバーが他のセクターの方と話せたこともポイントでした。自分たちの領域以外の人も東北のことを考えてくれてたり、課題感を共有してくれているということがわかったことが刺激になったようでした。

 

―World in Youという言葉から何を思い浮かべますか?橋本さんにとってのWorld in Youとはなんでしょうか?

 

2つの軸があると感じました。一つは、自分の世界や他国を含めた世界という軸と、もう一つは過去から未来への時間軸そのような関わりや歩み、物語というような概念。うまく言葉にできませんが、そのようなそんなイメージです。

 

―その世界はどのような世界であって欲しいですか?

喜びや嬉しさ、不安や怖いことといった全てのことを共有しやすい世界が良いなと思います。

ネガティブな感情は誰にでもありますが、それを1人で抱え込むのはつらいですよね。一方で、良いことは共有できれば他の人もハッピーな気持ちになりますよね。

 

―ご自身はどのように世界と関わりたいですか?

2つの観点があります。

まずは今持っている専門性を活かし、介護領域だけでなく、住民のエンパワーメント・人材育成などが必要な国や地域で役に立ちたいと考えています。

一方で、そのような専門性だけでなく、次の学びとの掛け合わせをすることで新しいキャリアを築きたいとも考えているんです。
そこで新たに築いたものを必要としてる人とも関わっていければいいなと思いますね。

 

▼飯田より、インタビューを終えて

世界に色々課題や問題はあっても、どうしてもそれが自分事に感じられず、行動に落とし込めない人は多いと思います(自分含め)。

そんな中、素直に自分の感じたことや思いを具体的にアクションに移していらっしゃり、そのアクションを受けてまた違う発見をされて・・という繰り返しが本当に素晴らしいなと感じました。

私も自身の感覚や感じることを見逃さずに、アクションを起こすことで自分の世界を広げていきたいと強く感じました。

 

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▼みなさんにとっての"world in you"をぜひおしえてください!

「あなたにとってのWorld in You」、「あなたはWorld(社会、世界)とどうつながりたいか?どこに自分の時間と命を使いたい?」をぜひこちらのフォームから教えてください。

 

(本記事はインタビューからの抜粋です。インタビュー全文はPodcastでお楽しみください。)

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