2025年2月。私たちWorld in Youは一般社団法人日本プロポーザルマネジメント協会(JPMA)に対して取り組んできたボード&ガバナンスのコンサルティング及び組織変革の伴走について、JPMA代表理事・式町久美子さんとの振り返りを行い、その成果や意義について再確認する機会を得ることができました。

本記事では、式町さんからお伺いした一般社団法人日本プロポーザルマネジメント協会の組織としての成長・変容のプロセス及び、ボード&ガバナンスのコンサルティングの価値、可能性についてご紹介いたします。

(聴き手 :大森雄貴&山本未生、記事:大森雄貴)

 

一般社団法人プロポーザルマネジメント協会
代表理事 式町久美子さん

〈プロフィール〉
日本ヒューレット・パッカードにて法人営業の提案支援チームを立ち上げ提案活動の生産性向上に従事。提案活動全般をマネジメントし組織提案力を高める「プロポーザルマネジメント」を体系化する国際的組織 APMP(Association of Proposal Management Professionals) が認定する最上位資格を日本人で初めて取得。日本での普及を目的とした一般社団法人日本プロポーザルマネジメント協会を設立。組織提案力強化を通じ、人や組織の発展を目指した活動に取り組んでいる。

 

 

目次

・JPMAへのWorld in Youの伴走プロセス
・組織内外からの信頼性を高めるガバナンス構築をめざして
・非営利組織のガバナンスの道筋を求めて
・ロジックモデルづくりで理念を形にする
・やってみてよかったこと、現れた変化
・成長フェーズの転換期にある組織の皆さんへ

 

 

JPMAへのWorld in Youの伴走プロセス

World in Youは2016年以降、以下のような経過を辿りながら、一般社団法人日本プロポーザルマネジメント協会(JPMA)の組織変革に継続的に伴走してきました。

2016年6月:
式町さんが、JPMAを設立したタイミングで、WIT(現World in You)のボード&ガバナンスワークショップにご参加。非営利組織のボードやガバナンスの基礎を学ぶ。

2021~2022年:
JPMAのガバナンス・組織体制、ロジックモデル策定、中長期方針などを話し合うため、JPMAの中心メンバーとのワークショップ(複数回)、式町さん(JPMA代表)たちとの個別相談を実施。

2023年~2024年:
理事会の運営などガバナンスの具体的な実践を向上していくため、式町さんたちとの個別相談を実施。

2024年~(進行中):
次の10年に向けての方向性や中期計画の議論を進めていくため、JPMAの中心メンバーとのワークショップ、式町さんたちとの個別相談を実施。

以下、式町さんからお伺いしたお話の内容をお届けします。

 

 

組織内外からの信頼性を高めるガバナンス構築をめざして

- 本日はよろしくお願いいたします。初めにWorld in Youにご依頼いただくまでの経緯についてお伺いしてもよろしいでしょうか?

式町さん:
一般社団法人日本プロポーザルマネジメント協会(以下、JPMA)は2015年11月に立ち上げた組織で、今年で設立10周年を迎えます。

プロポーザルマネジメントとは組織提案力を強化し提案価値を最大化するマネジメント手法であり、世界79か国、25支部に広がるAssociation of Proposal Management Professionals(以下、APMP)がこの手法の研究開発と標準化、普及啓発に務めています。

JPMAは日本で唯一のAPMPの認定トレーニング組織であり、国内におけるプロポーザルマネジメントに関する研修・定着支援とAPMP認定資格対策トレーニングや試験の提供といった普及啓発活動の他、APMP日本支部としての活動に取り組んできました。

その法人設立の経緯からJPMAには多様なステークホルダーが存在し、各団体・関係者間での協調が不可欠でした。

APMPグローバルHQや各国の支部、APMP日本支部の会員の皆さん、パートナー企業、プロポーザルマネジメントについての研修やトレーニングの採用を考えられる企業の役員・部長等の皆さんなどです。

こうした背景もあり、JPMAやプロポーザルマネジメントが私という個人の所有物ではなく、関わるステークホルダーの皆さんにとって信頼できる存在・日本の企業組織の提案活動に資する取り組みだという認識を確立し、メッセージとして発信していくためには、組織のガバナンスを整えることが重要であると考えていました。

元々、外資系企業に務めていたことやその業界での経験から、ガバナンスの概念や適切なルールを定めることが事業や組織の成長につながるということに触れてはいましたが、JPMAを立ち上げた当初は、それらをどのように自分の組織に実践していくかは手探りの状態でした。

 

 

非営利組織のガバナンスの道筋を求めて

- World in Youにボード&ガバナンスの相談をしようと考えられた、そのきっかけはどのようなものでしたか?

式町さん:
一般社団法人を立ち上げてちょうど1年目の頃、私がやりたいことを実現するための組織の作り方を悩んでいたときに、山本さん(山本未生)がグロービスで開催されたセミナーに参加したことがきっかけです。

その時のテーマは「非営利組織のボードのガバナンス」。当時の私の悩んでいたことそのものでしたし、私の興味関心のど真ん中のテーマを専門になさっている人がいらっしゃるということに驚きました。

私がプロポーザルマネジメントというものを日本に広めるために法人を立ち上げるとなった際、どのような法人形態で設立するかを考えた時がありました。

その時、株式会社として株主に貢献し、利益をどんどん上げ、スケールを拡大していくというよりも、設立当初の思いを大切に活動していくとなったらNPOや一般社団法人か……と考え、一般社団法人を選択しました。

当時の私はよくわからないながらも良い選択をしたな、と感じていました。

ただ、そうなると利益の最大化、規模の拡大といった一般的なビジネスの論理やビジネススクールで教わる内容とはまた別の情報が必要となりますが、私の関心のあるテーマの情報がなかなか世の中にないな……と考えていた時に、山本さんにお会いしました。

法人設立の際の思いを大切にしつつ、法人の運営はガバナンスを整え、組織としての意思決定を行う仕組みを作っていくこと。これにより、関わるステークホルダーへの信頼を得ていくこと。

山本さんのセミナーを伺ってから、いつかお世話になりたいと考えていました。

改めてWorld in You(当時は前身である一般社団法人WIT)に依頼しようと思ったのは、新しい成長フェーズに移行しようというとき、お願いできる財源も確保できたことや、新しい組織を作っていきたかったので、ご相談をさせていただきました。

 

 

ロジックモデルづくりで理念を形にする

- ボード&ガバナンスの伴走のプロセスの中で特に印象に残っていることは何でしょうか?

式町さん:
2021年にロジックモデルを作ったことが印象に残っています。

話は前後しますが、このロジックモデル作りの前の段階で、2019年頃にJPMA内部で理念の言語化・再定義に取り組んでいました。

それ以前の私たち自身について振り返ってみると、組織体制としては代表である私のトップダウンによる意思決定が大きく影響しており、協会のスタッフは主体的に動くというより私の指示待ちになっていたり、協会のめざすものとは異なる伝え方を外部の方に行う場面も見られたりと、組織課題が浮き彫りになってきていました。

また、会員や顧客となる皆さんもプロポーザルマネジメントそのものや私たちの活動に関して、わかりやすく見えやすい部分に引かれてくる方も当時は多く、なかなかその本質的な価値を世の中に届けきれていないというもどかしさがありました。

そこで、この事業に注力する意味とは何か、私たちJPMAの理念とは何かを言葉に紡ぎ出し、再定義しました。その時に紡ぎ出した理念が、以下のようなものです。

「企業の「組織提案力」向上を通じて提案価値を最大化し、人と組織が永続的に発展する社会をつくる」

こうして理念は再定義されましたが、その後、この新しい理念を絵に描いた餅にせず、現実のものにする行動を整合させるロードマップや組織が必要でした。

このタイミングで山本さんにお願いし、ご一緒していただきながら、理念を実現させるためのロードマップとして、ロジックモデルを描きました。

理念を実現するための組織をゼロから立ち上げることは半端なく大変だったので、このロジックモデルのおかげで思考が整理されて行動しやすくなりました

そのあと、2021年11月から2022年4月にかけて組織のガバナンスづくりとして、幹事会運営ルール、会員規約、選挙の仕組みを作りました。ルールの文章を作成し、弁護士などの方々や山本さんに過不足をチェックしていただきながら、理念を体現していくための組織体制が徐々に整ってきました。

この時期に、一般社団法人の下にAPMPの日本支部としての活動を中心に行う非営利部門と、企業に対してのトレーニングやコンサルティングを行う営利部門を明確に分け、それぞれ会計も別にして組織体制を整理しましたが、この意思決定も大きな出来事でした。

 

 

やってみてよかったこと、現れた変化

- ボード&ガバナンスの伴走の中で現れた変化や、やってみてよかったと感じられたのはどのような点ですか?

式町さん:
まず、組織のガバナンスについて明文化・構造化されたフレームワークがJPMAに共有されたことはとてもありがたいことでした。

ロジックモデルがロードマップとして定まり、それらをもとに組織の全体像やボードのあり方・制度設計も明確になり、経営者としても迷いがなくなって意思決定がしやすくなりました

また、理念を体現するための組織づくりが進む中で、理念に賛同してくださる人や企業が集まるようになりました。

個人会員が中心で会員数も40名程度と伸び悩んでいた状態から、現在は法人会員比率が増え、会員数も200名を超えるまでになりました。

近年はプロボーザルマネジメントの本質的な価値やJPMAの理念に共感いただく企業も増えてきたように思います。

理念に共感して新たに運営に参加いただく方も増え、代表である私の指示待ちではなく、主体的に活動に取り組んでいただいたり、提案してくれる方も多く集まってくれるようになりました。

2021年以降は代表への一極集中から権限移譲を考え始めた時期でもありました。

APMP日本支部としても私は代表、リーダーとして活動してきていましたが、次の世代への引き渡しの準備も進んでいます。現在では月例の会議の運営や実行は幹事に任せ、私自身は大きな意思決定の際に参画するという体制になりました。自分一人で抱えてやってきた状態から、次の世代にリードを任せられる基盤ができてきました。

私自身の役割も、組織運営のリーダーシップの発揮から後進となる講師育成などへと、別の活動に注力する余白が生まれてきました。

ロジックモデルを作った2021年から4年経った今、多様なステークホルダーの信頼を得ながら理念を体現する組織作りが、現実のものになりつつあると感じています。

 

 

成長フェーズの転換期にある組織の皆さんへ

- ご自身の体験も振り返りつつ、ボード&ガバナンスの伴走をどのような組織・団体に薦めたいと思われますか?

式町さん:
ボード&ガバナンスに関する情報やフレームワークは、自分1人がリーダーとして活動する組織から、チームや組織として成熟していくフェーズの組織・団体には必須の知見だと思います。

まず、非営利組織や理念を現実にしたい人、さまざまな利害を調整して、多くの人を巻き込みたい組織におすすめです。

また、自分から次の世代に引き継ぎたいという組織・団体にもおすすめしたいですね。

もしかすると、1〜2年間くらい、ご自身の現場でもがいてから後にWorld in Youさんにお問合せされる方が良いのかもしれません。

私自身、自分のやりたいことと、営利企業の仕組み・制度やその背景にある価値観が噛み合わず、試行錯誤を続けてきた中で「非営利組織のガバナンス」というテーマに出会ったという経緯があります。2019年頃、「私は何のためにこの活動をしているんだろう?」と自問自答していました。組織の変革にもまた多大な労力が必要となります。そうした時に、World in Youさんはあたたかく寄り添ってくださるのではないかと思います。

そしてその価値は、私のように数年経ってからの方が体感できるかもしれません。

組織のフェーズが移行する要所要所で伴走していただけると、とても心強いですね。

 

 

以上、World in Youの実施するボード&ガバナンスの伴走事例について、JPMA式町さんに伺ったお話を紹介してきました。

本記事をきっかけに「ボード&ガバナンスについてもっと知りたい!」「〇〇について尋ねてみたい!」と思っていただけましたら、ぜひこちらからメッセージしてください。

また、今後も継続的に非営利組織のガバナンスに関連した情報発信を行う予定ですので、更新情報のチェックもよろしくお願いいたします。