*この記事は、WIT(現World in You)のホームページからの再掲載です(2017年4月20日)

 

WITの活動を支えてくださっているWIT Acceleratorへのインタビュー。
WIT Senior Acceleratorの藤島敬太郎さんへのインタビュー記事後半です。
記事前半はこちら

 

聴き手・文責:山本未生
書記:小松里沙(WITインターン)

 

6. 「社会の『不』をリアルに学ぶ」について

以前WITインパクトレポート2016に書いていただいた下記のコメントの中で、「社会の『不』をリアルに学ぶ」というところに込めた意味をきかせていただけますか?

「橋本さんは介護という高齢化社会の日本におけるクリティカルな課題を強い志を持って解決しようとされている方。
『りぷらすの事業成長のために何をすべきか?』という議論そのものを通じて、社会の『不』をリアルに学ぶことが出来ると共に、自身の事業においても『社会にインパクト出していきたい』というモチベーションとなっている。
協業の一つとして、企業における『介護離職』を防ぐべく、弊社のリクルートマネジメントスクールの場を通じて、りぷらすさんの持つ知見を講座化してビジネスパーソンに届ける取り組みを企画中。」

リクルートでは、共通してこの「不」という文字を使っていますが、この「不」は「不満」や「不信」などの「不」です。満たされていない状況をどう解決するのかというのが、私たちの事業であり、社会の「不」を解決するトップランナーでありたいのです。「不」というのはマイナスというより、本人たちがご機嫌に暮らせるような社会を作りたい、という私たちの思いです。ご機嫌に暮らすためには解消しなければならない「不」があって、それを解消するのが私たちの役割なんです。

ひとり一人が感じる「不」をリアルに捉えることから私たちは始めますし、リアルに感じられるからこそ、解決しようというエネルギーになります。ソーシャルの方々も、そういう動機で最初出発しているので、そこがとても共感できますし、学びになります。

今の新規事業開発は、昔みたいにマーケットを遠巻きに見て、「ここに白土があるから、ここを取り込めば百億稼げます」というようなエリアはもうありません。「不」を徹底的に掘り下げた人が、ユニークなサービスを作れるようになっています。AirbnbもUberも、最初は皆が「何それ?」というような感じだったように。

 

7. WITのことを率直にどう思いますか?

去年のクロスボーダー・ラーニングジャーニーも含めて、本当に多様な人がよくここまで集まるプラットフォームになるな、と思います。私たちWIT Accelerator(アクセラレーター)はビジネスセクター出身者が多いと思いますが、そことソーシャルのつながり、あるいは、ソーシャル同士やビジネスパーソン同士のつながりにも可能性があります。この組み合わせの生み出す可能性がすごく魅力的です。偶発的に起こることも含めて楽しいです。例えば、アスイク(WIT Entrepreneur)の大橋さんが、教育分野の若手人材育成の団体を立ち上げるそうなので、自分としても何か支援できたら面白そうだなと思ったり。

このような場を継続的に発展させていくためにも、(WITが)収益をどうあげていくかが心配です。私から見るとこの団体自体がとても「いい人」なので。「お金はいいです」みたいな(笑)。もう少し提供している価値に対して対等であっていいと思います。価値に対して対等に対価をもらうこと。こちら側もプロフェッショナリズムがありますので、もらっていたらやはり価値を返さなければいけませんし、もらっている価値に対してはその分のお金を払うべきです。

 

WITラーニングジャーニーにて(左から2人目が藤島さん)

8. 藤島さんの場合、WITの何に対してお金を払っていますか?

私は偶発的な出会いも含めた多様性や人とのつながり、そこで受ける刺激にお金を払っています。

私の時間は限られていて、一生懸命活動はしていますが、私個人の活動で接点を持てる人たちには限界があります。私の今の仕事では130人くらいのマネジメントをしていますが、ダイレクトに役に立ったという実感は、長いレンジでは持てても、すぐには持ちにくいです。ですので、WITは、直接役に立つという実感を持てる機会なのです。

 

9. 藤島さんがWITに参画されてから、りぷらすのメンタリングをしていただいていましたが、最近りぷらすの理事に就任されました。その時のことを教えてください。

橋本さんからご依頼を受けました。急にかしこまって、「東京に行くので直接お話しできませんか」と言われて(笑)。詳しく聞いてみると、(りぷらすに)もっとジョインして欲しいという話でした。特にリーダーシップや組織開発に関して、メンバーに知見を提供してもらいたいということだったので、それなら役に立てるかもしれないと思い(理事就任を)お引き受けしました。

-理事としてどう関わっていらっしゃいますか?

3ヶ月に1回の理事会に参加しているのと、毎月1回橋本さんとのスカイプでコーチングをしています。これに加えて、時々「これについてどう思いますか?」とか、「こういう会社と契約を結ぶのですが、注意した方がいいことは何ですか?」などの個別の質問を頂いたりしています。

理事会は半年に1回はリアルにお会いして、半日から一日をかけて理事会を行い、残りはスカイプで参加しています。リアルでお会いするときは、問題についてお聞きして、その解決の支援をしています。今まで2回行っていますが、1回目はりぷらすの理念、ミッション、バリューを幹部の間で話し合うワークショップをやりました。2回目は、組織体制や人材の育成をどうしたらいいかについて、問題をどう解決すべきかをホワイトボードに書き出しながら議論しました。これは仕事でコンサルタントとしてやっていることとあまり変わりがないですね(笑)。

-メンターから理事になられて、何か変化はありますか?

責任は以前よりも感じますね。ただ、自分はリソースにも限りがありますし、ハンズオンで全部はできないので、どこまで支援してどこまで彼・彼女らの自立性にお任せするか、具体的なところに口出しすぎていないかは、気をつけています。彼・彼女らの事業に対するファクトを、私は彼・彼女ら以上には持っていないので、入り込みすぎないように意識しています。コンサルタントと同じですが、「外から見るとこう見えます」というようにお話しています。

 

10. 今後目指していきたいことはどんなことですか?(WITを直接通じてでも、間接的にでも)

WITでとかRMSでとかこだわりはないですが、私はとにかくさっきの図(インタビュー前半の問1の図)をどうやったら実現に導けるかを考えています。

-実現するには何が大切ですか?

すごく基本的なところで言えば、とにかく自分が接する世界を増やし、いろいろなところに接点を持っていくことですね。接点が増えないと偶発的なイノベーションが生まれる機会が増えないので。Steve Jobsが昔「connecting dots」と言っていたように、やっているうちにだんだんとつながっていく気がします。そこはあまり焦っていなくて、こういう活動を続けていくことが、結果この図の実現につながるのではないかと思っています。

また、りぷらすに接する前は、介護の分野について知見が全然なかったので、とても学びになっています。団体のマネタイズだけを考えると、本当は(りぷらすの)デイサービスの施設に利用者にずっと居てもらった方がいいわけですが、りぷらすは「運動させて(介護から)卒業させる」ことを目指しています。しかも、単に身体を「動かす」ことではなく、利用する当事者が「どんな生活をしたいのか」という目的を考えてもらうことが大事だ、ということも新鮮です。

逆に、(自分が)役に立てる部分も多くあると思っていて、1時間のスカイプで、橋本さん(りぷらす代表)とお話するだけで、これだけ自分が役に立てるのなら、「この1時間は自分はすごく世の中にとって有効であった!」みたいな(笑)。もちろん相手(橋本さん)からの評価も頂かないといけませんが、すごく役に立てている実感を持てるのが大きいです。

 

11. これからWITに関わるビジネスパーソンに向けて、メッセージがありましたらお願いします。

多様な出会いとそこから偶発的にできることや楽しみ、自分が拡張されていくような感覚を味わいたいと思ったら、ぜひ参画していただくとよいと思います。宣伝っぽいですが(笑)。

そういうのを楽しんで、自分の発想が広がったりとかそこで新たなことが起きたりとか。

二年前に参加したときの自分と今の自分は違うと思っています。今のポジションになった当時は自分を役割で縛って、役割を果たすことを考えてやっていましたが、だんだん自由になってきました。

 

インタビュアー(聴き手)より。

みなさま、最後までお読みいただき、ありがとうございます!
藤島さんのお話を伺いながら、しごと、他者、社会との出会いや関わりの中で、「自分が拡張されていく感覚を味」わう、にとても共鳴しました。
次のAcceleratorインタビューも楽しみです!

藤島さん、お話をきかせていただき、誠にありがとうございました。
小松さん、書記をありがとうございました。

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World in Youについて: World in Youは、組織・セクター・国などの様々な境界を越えて、より良い社会を目指して共創するリーダーや組織、コミュニティを育てることをミッションに、これまで200以上の社会的ミッション企業や500名以上のビジネスリーダー、非営利組織のリーダーや学生たちにリーダーシップ育成プログラムを提供してきました。
訳書『非営利組織のガバナンス』(2020年、英治出版)