「World in You × Org」は、より良い社会づくりに取り組んでいる様々な団体の想いや活動内容について伺い、学ぶWorld in You の対談シリーズです。

「女性のエンパワーメント」は ここ3年間、World in You が真剣に取り組んでいるテーマの一つであり、私たちはそのような社会起業家のストーリーを日本語と英語でお届けしています。

第10弾は、フランスの Social Builder の創設者兼 CEO である Emmanuelle Larroque さんにお話を伺いました。本記事はその対談の日本語による紹介です。英語の要約記事は、こちら。対談の全内容はYouTubeとPodcastでお楽しみいただけます（全編英語になります）。

聴き手：山本 未生、鬼頭 美帆　　記事・要約：鬼頭 美帆

Emmanuelle Larroque, Founder & CEO, Social Builder

エマニュエル・ラロックさん（以下、エマさん）は、フランスの社会的起業家であり、Social Builderの創設者兼CEO。ジェンダー平等と女性のリーダーシップを専門にし、女性のデジタル技術分野でのキャリアについて戦略的にサポートを推進しています。

▼英語記事要約

― テクノロジー業界における女性のエンパワーメント

過去12年間、Social Builderは失業中の女性を支援するプログラムを完全に無料で提供し続けており、結果として12年にわたり80,000人の女性に、テクノロジーとデジタル分野の仕事への就職やキャリア転換を手助けしてきました。企業、政府機関、他の非営利団体と連携してこの変革を推し進めています。

フランスではテクノロジー業界で女性が代表を務める企業はわずか26％であり、エンジニアやコーディングの職に従事する女性は16％にとどまっています。代表のエマさんは、男女は平等で、誰もが全てのことが可能だと言われ育ちながらも、現実には女性には平等な教育と機会がないことを目の当たりにしました。ジェンダー平等への情熱から、Social Builderはジェンダー平等を推進し、この業界で女性に雇用機会を創出することに尽力しています。

― 包括的かつ協力的なアプローチ

長期的な変化をもたらすためには、女性自身へのエンパワーメントと、女性が成功するための適切な環境を作ることの両方が重要だと考え、システムレベルでパートナーシップの構築と多様なステークホルダーへのアプローチを行っています。300以上のパートナーを有するネットワーク（トレーナー、専門コーチ、メンター、非営利団体、テクノロジー企業を含む）を持ち、探求・研修・関係づくり、という3つの柱を通じて、一人一人に適したサポートを提供しています。安心で支援的な学習環境を創出することで、シングルマザー、社会的に不利な状況にある人々、移民の背景を持つ人々など、18歳から63歳までの幅広い年齢層の女性が成功するために、必要なスキルと機会を習得できるよう支援しています。

― 拡張性のあるインパクトと、グローバルなビジョン

世界中でデジタル化が進む中、Social Builderはフランス国内のみならず、2019年にはニューヨークにもサービスを拡大するなど、異なる国々でプログラムを普及させ、STEM分野での女性のスキルと能力の向上を支援し、世界中でより多くの女性たちが社会の未来に貢献できるよう支援することを目指しています。

(写真提供 Social Builder)

(写真提供 Social Builder)

▼読者からの感想コメント

今回インタビューへの問いを出すのにご協力いただいた海野千尋さん・田中彩さんから、記事を読んでのコメントをいただきました！

海野千尋さん、NPO法人ArrowArrow 代表

World in Youの皆さんとエマさんとが繋がり、このインタビューが実現したことを心から嬉しく思っています。

Social Builderの活動そのものが、コレクティブに集まったステークホルダー（国・政府機関や企業組織、プロのコーチやメンター）によって、繋がり、支え合い、多くの女性の「働く」がテクノロジー分野へキャリアシフトがなし得られていることが素晴らしいと感じました。
デジタルスキルの学びだけではなく、リーダーシップやコミュニケーションスキルなどをサポートすることもなさっていて、その部分は、私たちNPO団体も大事にしている女性当事者のメンタルモデルを変えるような部分とも重なり、活動に共感をしています。
パンデミックによって、日本国内でも同様に女性の就労や暮らしに打撃があったのは間違いなく、より一層ジェンダーによるギャップが生まれていたことは私自身も体感した部分でもありました。そのころ、Social Builderはアメリカにも拡大を続けていたということをお聞きし、まさに、求める人が多数いるエリアで、デジタル・デバイドに陥らないよう、女性をサポートし続ける環境を創られてきたのだと理解しました。

エマさんのインタビューを読んで、場所を超えて、同時代で同じような課題感をもって挑んでいる人や組織、その拡がりがあることに、とても心強い想いに溢れました。

ありがとうございました。

田中彩さん、NPO法人ママワーク研究所＆WorkStep株式会社

デジタル分野における、女性のキャリアリスタートに12年間取組む中で構築した、変革プログラムの全容と大切にしている価値は、重要な示唆に富んでいると感じました。

特に印象的だったのは、デジタルを駆使しつつも、1番大切なのは「人と人との相互作用」というコメント。
新たな分野へのチャレンジ、継続して学び続けること、企業との出会い、様々なハードルが生じる場面ごとに、リアルな人が関わるからこそのバックアップ体制が構築されていることを感じ、女性のキャリア支援に取り組む者として大きく頷きました。

また、企業との出会いの場面までの伴走に、価値を共感する受け入れ企業との共創が大きな役割を果たしていることに感銘を受けました。

大変な交渉・調整があっての企業伴走の実現とは理解しつつも、この体制が、より現実的で安心して進めるキャリアリスタート環境づくりに多大な貢献をし、8万人もの女性達によるチャレンジにつながっているのだと感じました。

今、日本でもデジタル分野における女性のリスキリング、キャリアシフトに注目が集まっており、学びだけでなく、いかに産業の中で活躍する人材を輩出することにまで踏み込んだ動きとするためには、Social Builderの活動から学ぶことが多々あると思います。

日本の地方都市女性のキャリア支援をするプレイヤーの一人として、たくさんの学びと励みをいただけたインタビューに感謝します。

▼インタビュー後記

公開録画終了後も、エマさんはWorld in Youや、一緒にGoogle Impactを受賞したNPO法人ノーベルさんのことについて興味深く質問をしてくれて、お互いに女性のエンパワーメントに向けて、今後重なり合うことがあると嬉しいと言ってくれました。人間性を中心におき、サポートする相手の人生を包み込むようなアプローチ、システムレベルで活動を進める合理性に感銘を受けました。一人一人が自分らしく働くことを大事にしつつ、技術でスケールさせていくことの両立は可能なのだと、Social Builderから教わったような気がします。
（鬼頭 美帆）

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