サスティナブルな事業経営を目指して ~ シャイン・オン!キッズのファシリティドッグプログラム
World in Youでは、より良い社会づくりに取り組んでいる様々な団体の想いや活動内容について伺いながら、皆さんにもお届けしようと、対談シリーズ「World in You × Org」を行っています。
第12回は、小児がんや重い病気の子どもとその家族を支援する特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズ事務局長のニーリー美穂さんと研究員 / 学術発信プロジェクト担当(Ph.D.)の村田夏子さんにお話を伺いました。
本記事は対談のまとめ記事です。対談の全内容はYouTubeでお楽しみください。
(聴き手:山本未生、記事:本多百音、議事録:三代祐子・小沼瑠美)
シャイン・オン!キッズのプログラム
現在、シャイン・オン!キッズでは主に以下の5つのプログラムが展開されています。
- ビーズオブカレッジ: アートの介在療法を通じて、約500人の方を支援し、来年1月には30病院に展開予定です。
- ファシリティドッグ: 全国の4病院で展開され、年間で延べ7000人の方々を訪問しています。
- キャンプカレッジ: 退院された方々が集まり、キャリア支援や学びの場を提供しており、1泊2日のキャンプも行われます。
- シャイン・オン!コネクションズ: コロナ禍で立ち上げられたプログラムで、18病院に通信付きのiPadを70台配布し、オンラインで学びや交流が行われています。
- シャイン・オン!フレンズ: コロナ禍で立ち上げられた小児がんの患者が繋がるコミュニティWebサイトで、助成金事業が行われています。
今回は「ファシリティドッグ」プログラムに焦点を当ててお話しします。
(シャイン・オン!キッズプレゼン資料より抜粋)
ファシリティドッグとは
ファシリティドッグは、定義上は医療施設・特別支援学級・裁判所など特定の施設に常勤し、職員の一員として活動する犬のことです。
(シャイン・オン!キッズプレゼン資料より抜粋)
日本では小児がん患者支援団体として子供病院での活動が主ですが、海外では医療施設以外にも特別支援学級や裁判所などで活躍しています。
現在、神奈川県立こども医療センター、東京都立小児総合医療センター、静岡県立こども病院、国立成育医療研究センターの4病院で専属のハンドラーとファシリティドッグのペアが常勤しています。
ファシリティドッグは常勤で活動し、ハンドラーは医療者であり、セラピードッグとの違いは、訪問型ではない事の他に、生まれや活動方法も異なります。手術室や骨髄穿刺などの侵襲性の高い処置に同行し、患者さんに癒しや応援を提供しています。看護師がハンドラーを務めるため、院内の調整力や多職種連携に強みがあり、感染対策も徹底されています。
ファシリティドッグの導入後は特に影響がないと報告されており、事業は13年間事故やトラブルなく継続されています。
また、社会的なインパクトもあり、昨年保健文化賞を受賞し、英語検定の教科書にも掲載されました。
事業化に向けた取り組み
ファシリティドッグプログラムは、看護師と犬をセットで派遣するため、直接経費だけでも年間約1000万円かかる課題があります。この資金を安定的に確保していくことが課題となっています。
そこで、以下にお話する事業化に向けた取り組みを重点的に行ってきました。
1.認知向上、ブランディング強化
2.論理に訴える発信、研究
3.資金確保の多様化
4.組織基盤の強化
ブランディングと認知向上の取り組み
アメリカの自動車会社であるクライスラー(当時)との提携により、ファシリティドッグと子供たちの活動をキラキラとした場面で捉えた写真集を作成しました。キャンペーンでは、子供たち自身がキヤノンの一眼レフカメラを使って撮影した写真を活用し、その成果物をクラウドファンディングで販売することで資金調達を行いました。
(シャイン・オン!キッズプレゼン資料より抜粋)
助成団体や企業からの支援を得て、写真展を開催しました。この写真展は、リアルな場での交流やコミュニティ形成を目指しており、国際フォーラムなどでの開催が実現しました。 医療関係者や支援者、受益者など様々な立場の人々が集まり、トークショーやファシリティドッグとの触れ合いなどを通じてコミュニティの形成とムーブメントの拡大を図りました。
(シャイン・オン!キッズプレゼン資料より抜粋)
寝ているときに安心感を与えるぬいぐるみやブランケットの提供を目指し、ゴルフチャリティーイベントを通じて、病院の全患者にぬいぐるみを配布しました。
最近では、アクサダイレクト社との提携でアニーちゃんのぬいぐるみを共同開発し、子供たちに直接的な支援を提供するとともに、企業との協業による資金調達を行っています。
倫理に訴える発信(研究)
静岡県立こども病院・関西大学と共同し、ファシリティドッグの活動の強みについての研究が国際紙のPLUS ONEに掲載されました。この研究では、ファシリティドッグの活動により、終末期の緩和ケアや患者さんからの協力が得られやすくなることが示されました。
ハンドラーの看護師としてのプレゼンも重要視され、導入4病院のハンドラーが学会やワークショップに登壇し、医療者に向けてファシリティドッグの効果を紹介しています。
資金確保の多様化とその成果
国内の助成金の獲得や、中長期計画の提示が重要視されています。初期は全ての資金を寄付で賄っていましたが、日本財団や地元の支援者からの助成金を活用することで普及を進めています。
コロナ禍でクラウドファンディングが有力な資金源となりました。READYFORのプラットフォームを利用して寄付の一元化を図り、年間の寄付額が増加しました。
東日本大震災後、各病院に導入費を業務委託化して収入を得ることで、資金源の多様化に成功しました。
今後の課題
今後は下記のことに取り組みながら、犬たちをどう育てていくかが重要となってきます。
1.犬を育てる施設、人材の確保
2.他団体提携によるコレクティブインパクトの創出
3.動物介在療法のパブリックフェアーズ、制度化等の働きかけ
ファシリティドッグは一頭の犬というより大事な仲間です。彼らや初代ファシリティドッグのベーリー、タイラーに感謝をしながら活動しています。
皆さんが気になったところやアイディアがあればお寄せいただけるととても嬉しいです。
本日はありがとうございました。