本記事では、ボードフェロープログラムに参加いただいたサントリーホールディングスCSR推進部の一木典子さん(第1期~3期まで参加者やプロボノとして参加)、村田佳幸さん(第3期に参加)に本プログラム参加後の振り返りインタビューを実施させて頂いた内容について紹介いたします。

 

サントリーホールディングス株式会社CSR推進部長
一木 典子さん

プロフィール
東京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。1994年、JR東日本に入社。株式会社オレンジページの代表取締役社長を経て、2022 年サントリーホールディングス株式会社に入社。企業理念である「人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、『人間の生命の輝き』をめざす」を目的に、同社の「利益三分主義」に基づきCSR活動を推進している。

 

サントリーホールディングス株式会社CSR推進部 課長
村田佳幸さん

プロフィール
石川県生まれ。早稲田大学商学部卒。1998年、サントリーホールディングス株式会社入社以来、酒類営業・営業企画・エリアマーケティングを担当。2023年秋より現職。困難に直面する子どもを支援する次世代エンパワメント活動「君は未知数 サントリー (suntory.co.jp)」を推進している。

 

ボードフェロープログラム(以下、BFP)とは、ビジネスリーダーと非営利組織の経営陣が、社会課題解決事業の経営について本質的な議論・協働を通じて、社会にインパクトをもたらすリーダーシップを磨く、約6か月間の実践・体験型プログラムです。

これまで、非営利組織のボードメンバー・経営陣と、企業の経営者、大手企業サステナビリティ/CSR部長、次期役員候補、新規事業企画者、弁護士、会計士、議員、大学教授、非営利団体の代表、大学院生といった多様なセクターの人々が共に経営やガバナンスについて学び、セクターを越えて協働・創発を生み出す土壌を育んできました。

 

BFP参加のきっかけ

一木さん:
私が初めてBFPを知ることとなった第1期テーマが「こどもを産んだ後も女性が本来の力を発揮し続けられる社会の実現」でした。
当時の私は、多数の女性を読者に持つ生活情報誌をつくる企業にいたこともあり、第1期参加団体の皆さんの活動に触れ、女性のキャリア、生きがい、困りごとについて理解を深めることは企業のニーズとしても合っていました。
そこで、第1期では後に役員になる当時の人事総務部長に参加してもらうことを決め、私自身はプロボノとして関わり始めました。

第1期の参加を通しての気づきですが、BFPで体感する社会課題やそこに向き合うNPOの実態、さらに感情的な揺さぶりも含めて自身の中に湧き上がってくるものは、例えば1時間の講演を聴くのとは全く異なる質感を伴います。それは、日頃の企業活動を通してもなかなか捉えることができない領域について知る貴重な機会でもありました。

企業が経済的価値と社会的価値を両立する存在に進化するためには、こうした感覚を、意思決定に関わる層だけではなく、実務に携わるリーダー一人ひとりが持つことが大切なのではないかと思い、まずは私自身が第2期の参加者として、そして現職となった後の第3期では、同じCSR推進部の村田さんにも声をかけて、一緒に参加することにしました。

 

村田さん:
私はもともと地方出身で、企業の立場から地方創生や地域活性などの社会貢献活動ができないかと考えていました。

そこで、希望して昨年秋からCSR推進部に配属されることとなったのですが、それまではエリア営業一本で仕事に取り組んできていました。

当時はまだまだ社会貢献活動やNPOについてはわからないことが多く、また、CSR推進部として多くのNPOとも関わることになるため、そもそもNPOやその活動について理解を深める必要性がありました。

ちょうどそのタイミングで、同じCSR推進部の一木さんからBFPを紹介してもらったことが参加のきっかけです。

BFPに参加することで、NPO独自の課題感や活動の実情など知見を広げると共に、企業の立場から見えることやできることなど、自分の考えを整理できるのではないかと考えていました。

 

BFPを通じての変化、気づき、学んだこと

一木さん:
BFPでは、NPOとの関わり方のデザインが特に工夫されているなと感じていました。

BFPの構成としては大きく2つ。社会課題やNPOの実情、エンドゲームなどのセオリーやフレームワークといった客観的な要素を学ぶ部分と、主観的かつ個別的に、特定のNPOが向き合っている社会課題や活動上の悩み、困りごと、ぶつかる壁について、当事者からよく聴いたうえで、仲間として共に考える部分があります。

ビジネスセクターの参加者はNPOのボードメンバーとして関わることを期待されているわけですが、個人としてのパーソナリティを知り合い、信頼関係を築きながら、責任あるポジションを意識して関わるという環境を整えていただいていたように思います。

プログラムに参加した当初は、模擬ボードミーティングの場で「立派なこと」や「経営の役に立つこと」を言わなきゃ……というように、まるでベテラン経営者やコンサルタントのような専門的な発言をしなくてはいけないのではないか、と気負ってしまう部分もありました。
そうした中で、個人として感じたことを率直に伝えた何気ない発言がNPOの方にすごく響いていたり、実際に相手からもそのようなフィードバックをいただく経験を通じて、どんな発言がNPOの皆さんの力になるのか?のイメージが大きく変わりました。

特に感じたのは、他者からの愛あるリフレクティングってとてもパワフルなんだな、ということです。

日頃の関係性が影響する場合に、言われた言葉をスッと受け取れない、ということがあるかもしれません。ですが、安心感のある他者からのリフレクティングというのは、素直に受け取りやすく、それをBFPの場では、企業、NPOの方々がお互いにできていたように感じました。

今振り返ると、相手側の立場を慮るだけでも、一企業の人間としての考えや感じたことを一方的に伝えるだけでもなく、議論に上がった課題を真ん中にして一人ひとりが個としてどのように関われるのか?という見方に、気づいたらなっていました。

 

村田さん:
私にとって一番良かったのは、BFPの模擬ボードミーティングです。

私がBFPに参加した際は、約2ヶ月ごとに1つの団体の模擬理事の担当を交代しながら3つの団体の議論に参加し、団体が今まさに抱えている組織課題や事業課題に向き合いました。

私はBFPに参加した当初、参加されている3団体のことはほとんど知らない状態でしたが、このプログラム設計によって3つの団体の共通点や相違点の比較検討ができるようになりました。

プログラムの設計の仕方によっては参加者が1つの団体を継続的に担当する形もあり得ますが、3団体の共通点・相違点のような気づきは、今回のような形式だったからこそよくわかりました。

また、現在私はCSR推進部でさまざまな困難に直面する子ども支援に取り組んでいますが、子ども・若者支援と隣接する領域の団体とも出会い、その活動や課題についても知る機会になりましたね。

 

BFP参加後の変化、現在に繋がっている実践など

一木さん:
今、私は仕事で様々なNPOの方々と連携・協働する機会が多くあります。

その時に、模擬ボードミーティングの時に本音で話した経験値があるからこそ、「こんなこと言って大丈夫かしら」などと遠慮しすぎることなく、組織の課題や大切にしていることへの理解・共感をもちながら、時に厳しく一緒に考えていくような関係性、関わり方に自然と入れているように思います。

また、BFPの経験から、NPOの活動に参加されている皆さんのご苦労についても感じるものがありました。

ある社会課題に対して「やらずにはいられない」という気持ちから活動に取り組まれている中で、活動そのものだけでなく、活動を継続するための組織面、資金面などに係るさまざまな悩みを抱えながら、これらの尊い活動をされているわけです。

こうしたことがわかってくると、とても他人事ではいられません。

こうした活動は、各NPOを取り巻く多様な存在、例えば、行政、民間企業、個人ができることをやっていかないと続かないし、広がりません。自社では何ができるのか?ということを考えるヒントをいただいたように思います。

模擬ボードミーティングでの体験は、本気で相手と向き合うことで『あ、そういうとこが課題なら企業としてこういうことができるかも』というように、大きな問題に対して、自分たちができる隙間や介入ポイントの具体的イメージが湧いてくることも教えてくれました。

人手や資金、営業力、社会課題について広めることや仲間を呼びかけることなど、企業人としても個人としても、小さくてもできることが色々ある、と感じられるようになりました。それが、現在推進している次世代エンパワメント活動「君は未知数 サントリー (suntory.co.jp)」にも活かされていると思います。

 

村田さん:
一木さんと同じく私も日々、さまざまなNPOとやりとりしています。このやりとりをする際、NPOへの理解が深まったように思います。

目の前のやるべきことに時間やリソースを割かれ、人材育成の仕組み化や組織化まで手が回っていないといった課題を持たれているNPOがあることも、BFPでの経験を通じて見えてきました。

日々のNPOとの関わりの中で企業の視点からできることがないかを具体的に考えていけるようになったのは、BFPでの経験が大きいですね。

 

BFPの企業、社会にとっての意義・価値とは?

一木さん:
BFPは、一企業の人間としても一個人としても、貴重な機会を提供してくれていると思います。

BFPには、声にならない、声が届きにくい、あるいは声を聞く機会が少ない社会課題の当事者の生の声に向き合っているNPOの皆さんが参加されています。

ビジネスセクターの参加者にとってBFPは、NPOのリアリティや当事者意識、本気さに触れ、皆さんから学び、共に課題に向き合うことで、社会課題を他人事から自分事へと内在化し、内面の変容が促される機会になっているように思います。

共通の社会課題に対して共感し、協働する仲間としてNPOの皆さんと出会い、共に学び、真摯に向き合って対話していくことは、これまでにないソリューションやイノベーションを生み出し、これから企業が社会で果たす役割やステージを変えることにつながるのではないかと感じています。

また、半年間のプロセスを通じて企業、NPOが課題をリアルに共有し、良い関係性の仲間が増えていくことで、根本的なシステムチェンジ、コレクティブインパクトに繋がるパートナーシップやネットワークを相互に構築し、共に力を高め合えているなと感じます。

 

村田さん:
私が実際にBFPに参加して感じたことは、共助資本主義(※)が実践されている場であるということです。

※企業が社会の豊かさや人々のwell-beingに貢献するため、社会課題解決に積極的に取り組むとともにソーシャルセクターとの連携を進める形で経済の持続的成長、イノベーション創出をめざそうとする、2023年4月に経済同友会から発信・提唱された新しい資本主義像。

BFPは、このような日本最先端の社会構想や取り組みを具体的なプログラムへと落とし込み、企業にとってもソーシャルセクターにとっても痒いところに手が届くような形で、共創しながら実践できている場だな、と感じます。

こうした取り組みが広がり、一つひとつがユニークな取り組みをされているNPOがもっともっと企業に認知され、理解されていく雰囲気や流れに繋がっていけばと思いますね。

 

BFP第1期〜第3期を経て、これから

以上、一木さんと村田さんの参加後のインタビュー内容について紹介してきました。

お二人にご参加いただいた第3期のプログラム終了後、World in Youは2024年4月に第1〜3期の参加者が集うギャザリングを開催しました。

 

 

BFPでのつながりは少しずつ、その後の連携や協働の形で芽を出しつつあります。

そして現在、World in Youはこれまでの流れを引き継ぎ、さらに発展させていくべく第4期プログラムの開催準備を進めており、参加者・企業の募集を11月秋から開始します。詳細はこちらからご覧ください。

本記事をきっかけに「BFPについてもっと知りたい!」「〇〇について尋ねてみたい!」と思っていただけましたら、ぜひこちらからメッセージしてください。

また、今後も継続的に情報発信を行う予定ですので、更新情報のチェックもよろしくお願いいたします。

 

 

お問い合わせはこちら